主婦って時間があるんです。学生のときはテストだレポートだ部活だサークルだ、とかで、徹夜してもぜんぜん何にも消化できてない感じで、「一日が48時間だったら! いやせめてあと1時間でもいいからプラスしておくれ・・・神様!」なんて思ってたのに。ちなみに私は無宗教ですがこういうときだけは神頼みです。占いとかも基本は信じていないのですが、「今日は最高の日!」とか、都合のいいことが書いてあればとりあえず信じてみるたちです。「ラッキーカラーはピンク!」とか書いてあれば、やっぱりピンク系の服を着てみたりとか。反対に、ネガティブなことが書いてあったら見なかったことにします。

なんか脱線してしまいましたが、主婦って時間があるんですよ。あれだけ忙しかったのに、結婚して家庭に入ったらなんか何にもなくなっちゃって。大都会から田舎の原っぱに連れてこられていきなり放り出されたような。旦那は仕事で夜遅くまで帰ってこないし、子供もまだだし(というかできにくいみたい?)。それに転勤で今までいたところから離れちゃって、友達もあんまりいないし。それで、近所の図書館に行って本を借りてくることにしました。もしかしたら図書館員の人たちが、いま一番私と顔合わせてる人たちなのかも? とそんな生活をもう何年も続けているのです。

え? 飽きないのかって? 意外と飽きないもんですよ。スローライフってやつ? わかりませんが。それに友達とおしゃべりするのも本を読むのもそんな変わらないかなと。本を読むのはずっと聞き役に徹してる感じで、本当は私のキャラじゃないんですが。でもそれも面白い話ならずっと聞いてられます。読者を楽しませるために書かれてるんだから、楽しくなれないはずはないんです。

べつに大した読書家じゃないんです。小難しい本よりも、やっぱり軽めの小説ばかり読んでます。難しいと寝ちゃうので。気楽に読める本がいいですよ。でもあんまり軽い本ばかり読んでると、なんだかたまには難しいのも読みたくなってきちゃいます。軽いのに飽きてきたというか、どれも似たようなストーリーに見えることが多くなってきて。「ああ、これは伏線だなー」と思って読んでると予想していた通りの事件が起きて予想していた通りの結論に収まるとか。先の展開が読めるようになってきました。フラグっていうんでしょうか。「この戦争が終わったら結婚するんだ」と登場人物がつぶやいた後にすぐに死んでしまうような。そういうのが随所にあるんです。まあ読者にわかりやすく楽しんでもらうためなんでしょうけど、そういうのに飽きてきたというか。だから難しい本も読んでみようという気になってきました。それで手を出してみたのです。哲学に・・・。

いきなりは難しすぎるんじゃないかって? そうですよね。思います。でも、ガイドブック的なものは今までも読んできたからなんとなく読めそうな予感はあったんです。流れみたいなものもつかんでいる気はしたし。それで、ちゃんとした哲学書に手を出してみることにしました。そう、カントの『純粋理性批判』です。なんでカントかって? だってガイドブックに、「とにかくカントが大事だ!」って書いてあったからです(泣)

「なんなんだこれは!」という感じでした。まったく読めませんでした。最初の日は1日かけても10ページくらいしか読めませんでした。文章がかたすぎて頭に入ってこない。ぜんぜん伏線がない。話が飛びまくってるように思える。100回読んでも意味がわからない。スゴいです・・・。「えー、本当に?? これってあんた(カント)の思い込みなんじゃないの?」なんて疑問点も1ページに10個くらい出てきます。私の理解が足りないだけなんですが。

そもそもカントは読者に向かって話してないんですよ。すくなくとも、私のようなちゃらんぽらんなエセ読書家は相手にしていない。学のある偉い人か、あるいは自問自答なんでしょう。カントはカントにしかわからない、なんて言ったら哲学をちゃんとやってる人たちに怒られてしまうかもしれませんが、私は思いました。

それでもなんとか読みましたよ・・・。3ヶ月もかけて。主婦は(というか私は)時間だけはあるんです! 石の上にも三年根性で読みました。たしかに得るものはありましたよ。たぶん軽い本100冊分、いや、1000冊分くらい得るものはあったと思います。でももう懲りました。疲れました。精も根も尽き果てて倒れ込みました。ゴールしたマラソンランナーが倒れ込むように。それももちろんトップランナーじゃなくて、うしろから2番目くらいで、ぎりぎり途中棄権を免れたような感じです。

いまは以前にも増して、軽くて軽くて綿菓子のようにふわふわした本を読んでいます。反動なんでしょうか。読んでいて体が浮き上がってきそうなくらいです。今日も図書館でいっぱい借りてきてふわふわするつもりです。