私はだいたい自転車で買い物に行ったり近所を移動したりしているのですが、この自転車、もう10年くらい乗っていて、錆で赤茶けてすごいことになっています。そそっかしくて何度もこかしているので前のカゴなんてグンニャリ曲がっていますし、ベルも壊れて土台だけが残っています。近所のどぶ川のコンクリートのところに放置されている自転車とそんなに変わらないようなありさまです。

「もう買い換え時かなー?」なんて思いながらもなんとなく愛着もあるし新しいのを買うのを考えるのも面倒なのでずるずると使い続けています。近所の主婦友とお茶するときもこの自転車でオシャレなカフェに乗り付けるので、「なんとかしないさいよー」とよく言われるのですが、あまのじゃくな私はそんなことを言われれば言われるほど「まだまだ大丈夫だよー」と使い続ける覚悟を新たにするのでした。

この前、そんな私の決心を揺るがす事件が起きました。駅前の横断歩道を自転車に乗ってわたろうとしていたときに、「ちょっと!」と後ろから声をかけられたのです。振り向くといかつい顔をした浅黒い中年の警官が腹をゆすりながら走ってきました。私が止まると、「ちょっといいですか?」と言って、私の名前と住所を訊いてきます。これが職務質問というやつかー! 私はドキドキしながら自転車を下りておっかなびっくり答えました。

警官はひとしきりそれを書き込むと、今度は自転車の後ろのところを指でごしごしこすってそこに書いてある何かをメモし始めました。私ものぞき込むと、どうやら番号のようです。製造番号か何かでしょうか? 警官がメモから顔を上げて、「この自転車、登録はされていますか?」と言うので、「登録ってなんですか?」と間の抜けた顔で言うと、なんだそんなことも知らないのかといった感じで「防犯登録」について教えてくれました。

なんでも、自転車を持ってる人はみんな、防犯登録をするのが義務になっているようです。罰則はないようなのですが、まったく知りませんでした。最近は自転車を購入するときにお店で勧められるようです。私はこの自転車を買ったときのことを頭を巡らせて思い出そうとしたのですが、勧められたような・・・勧められていないような・・・。なんせ10年前のことです。10年と言ってるのも、実際の年は忘れてしまって10年と言っているだけなので、もっとずっと昔に買ったのかもしれません。

警官のおじさんは説明しながら、トランシーバみたいな機械に番号を入力して何かを確認しているようです。「何をやってるんですか?」と訊くと、「あまりに古いもんだから、盗難車かと思って・・・」とか言うんです! 私は「えっ!」と目を見開きました。古いから盗難車って・・・、どういうこと?? 「でも、大丈夫ですね。別の人の名前で防犯登録はされていませんでした」機械から顔を上げると、しれっとした顔でそう言って笑っています。これってつまり・・・私は自転車泥棒だと思われたの?? 警官のおじさんは「防犯登録してくださいよー」と言って手を振ると、駅前の派出所のほうに去って行きました。

古い自転車に乗ってるだけで自転車泥棒と間違われるなんて・・・。やっぱり納得いきません。そりゃ、「人を見たら泥棒と思え」という格言はありますよ。でも「古い自転車を見たら盗難車と思え」というのはあんまりだと思いました。その思考回路がわからないです。なんというのか、やっつけ仕事? やっぱりよくわかりません。

で、しましたよ。防犯登録。こんなボロッボロの自転車一体誰が盗るんだよ! と思いながらも、近所の自転車屋さんで500円払って登録してきました。もちろん、ピュアな心で登録したんじゃなくて、またどこかで盗難車に間違えられたときに、「登録してますよ!」とドヤ顔してやるためにです。なんかねじ曲がってますか? ねじ曲がってますよね。でもいいんです。当分は買い換えることもなく、どこかで警官に呼び止められるのを心待ちにしながら、この自転車を愛用していくつもりです。